【巡りNo.2】東京都／日本各地のみそ70種に出逢える噌ムリエがいる“佐野みそ本店”

記事：実践料理研究家　岩木みさき
写真：さくらいしょうこ

ずらりと並ぶみそ桶が印象的な「佐野みそ本店」は、JR総武線亀戸駅より徒歩5分程にあるみそを量り売りしているみそ専門店です。

創業は昭和9年6月25日、現・佐野社長のお祖父様とお祖母様にあたる一郎さんと花子さんが社屋の３階で結婚式を挙げ、その日の午後にお店を開店されました。
創業日が結婚記念日というとても素敵なエピソード！

↑みそ汁に使うだしの素材やかつお節削り器、みそのお菓子など

現地まで足を運び日本各地から集めた70種のみそのうち、みそ桶に盛られているのは社内総選挙で選抜された46！他にも自然派の漬け物、海と山の乾物など佐野社長が「これだ！」と思うこだわりの商品1000アイテムが取り揃えられています。

↑佐野正明社長

2016年、岩木が初めて開催したみそイベント「ガチみそ会」にも足を運んでくださったり、朝の情報番組にみそネタでTV出演する際も取材にご協力いただいたり、とてもお世話になっています。みそ専門店としての伝統を守りつつ、現代に合わせたみその新しい提案にも積極的に取り組まれている熱いハートの持ち主です。

今回取材させていただいた中で、先代の一郎さんのお話を沢山してくださいました。

お祖父様の一郎さんは出店する場所を探すのに東京中を自転車でまわり、その当時大きな工場が建ち並ぶ、まかないでみそ汁を出すためにみそを必要としていた人工密集地帯の亀戸の地を選ばれたそう。

当時はかさ増しのためにみそに芋を混ぜた“芋みそ”などが多く出回っていた時代。
そんな時代でも、きちんとした製法で造られたみそだけを販売するというこだわりを持たれていたそうです。

昭和20年、空襲で店舗が焼けてしまった後も再建しみその配給所として再スタート。
配給するみその量に規制がかかる中「戦争に負けて荒廃した日本には今こそみそが必要。みそを届けなくては！」と統制品のため見つかれば没収される危険を冒してみそを買い付けに行き、多くの方の元へみそを届けられたそう。とても慎重派で堅実だった一郎さんが、利益や損害よりもなんとかみそを届けようとした使命感に佐野社長は感銘を受けたそうで、今もこれからも“お客様に喜んでいただくことを一番にする”という想いを大切にしていきたいとお話されていました。

↑今回も色々ご試食させていただきました

「お客様とみその話をしていると、必ず家族の話になるんです」と佐野社長。
新婚時代に一生懸命おみそ汁を作った思い出とか、家族の健康を考えてメニューを考えられているお母さんのお話を伺うと「みそって絶対になくてはならないものだ」と改めて感じると言います。

みそは日本人にとって、生活の中にもコミュニケーションのきっかけとしてもなくてはならないものなのです。

↑接客をする店長の村上さん

佐野みそ本店では、購入する際に試食ができ、みそについて的確なアドバイスをしてくださる「噌ムリエ」さんがいます。
噌ムリエの皆さんは毎朝勉強会を開かれているそうで、当番制でみそ汁を作り、何のみそが使用されているかを問題にしたり、みその味に具材が合うかなど話し合い、解説カードを作成されているそうです。

「噌ムリエを身近な存在に感じていただきたいので、細かく説明するよりもお客様が求めていることに素直にお応えしています。」とお話してくださった店長の村上さん。

「岩木さんはお会いするたびに本当に輝いて見えるので、あのオーラで多くの人の意識に影響を与えていっていただけると思います。楽しみながらみそを広げていってほしいですね。応援しています！！　あ、自分ももっと頑張ります！！（笑）」
と、温かいメッセージもいただきました。村上店長、ありがとうございます！！

↑各みそ桶には、味の特徴やオススメの具材などが絵付きで説明されています

白みそは4～6ヶ月、赤みそは1年を基本に、口に入れた瞬間に味わいが力強く感じられるみそを選ばれているので、赤に限らず白も味わい深いものに出会えます。
ちなみに、木桶仕込みのみそ＝ガチみそⓇは現在9種あるそう。
雑穀と塩だけで造られたみそ、大麦麹と塩だけで造られたみそなど、個性豊かなみそも多数取り揃えられています。

佐野社長が教えてくださったのですが、しっかりと発酵、つまり分解されているみそはみそ汁にした時に上下に分離せず、マントルのようにまるくなるのだそう！これは新情報♪