みそ作りに必要な基本の材料は、大豆、麹、塩の3つ。たったこれだけのシンプルな材料で、あの風味豊かなみそができあがるわけですから、本当に興味深いです。
大豆、、麹、、塩それぞれの栄養成分や身体にとっての嬉しい効果など、原材料についての詳しいお話しはまた追々お伝えしていきますね。
みその基礎知識編、第一回目の今回は、工場などでみそが作られるまでの一般的な工程をみていきましょう!
発酵の主役「麹」を準備する
みそは大豆に麹を加えることで発酵させて作る調味料です。まずは、発酵をすすめる主役、〝麹〟の作り方からいきます。
みそに使われる麹は、米麹(糀)、麦麹、、豆麹(大豆麹)の3種類。この中のどれを使うかによって、完成するみそも、米みそ、麦みそ、豆みそに分かれていくわけです。
今回は、一番多く使われている〝米麹〟を例に麹作り(製麹)を解説していきます。
米をしっかりと洗い、たっぷりの水に浸して十分に水を吸収させてから蒸していきます。
蒸し上がった米を人肌程度(30~35度)に冷ましてから、〝種麹〟という麹菌を米に投入。まんべんなく均一になるように種麹を混ぜ、他の雑菌が入り込まないように管理された温かい麹室(こうじむろ)の中で、2日間ほど寝かせます。米全体が、ふんわりとした白いコウジカビに覆われていれば米麹の完成。もちろん、コウジカビの〝カビ〟は食品にしても全く問題の無いものですから安心してくださいね。
米麹づくりは、米の温度が低すぎると麹の発育が遅れますし、麹菌以外の雑菌が繁殖すれば腐敗して食べるのには適さない状態になってしまいます。温度管理や環境作りなど、とても繊細な作業なんですね。
以上が、米麹作りの工程になります。
大豆でみその土台作り
次はみその土台となる大豆の準備をしていきます。
大豆の選び方ですが、皮が薄く、香りが良いものが理想的。特に国産の丸大豆がオススメです。白みそなど色の淡いみその原料に選ぶ場合には、大豆も同じように淡い色のものを選択した方が良いです。
大豆も水でよく洗い、虫食いや欠け、変色しているものは取り除きます。大豆の量の4倍近くの水に浸し、そのまま最低でも12時間、夏場でも15時間~、冬場は24時間を目安に置いておきます。十分に水を吸収させることが蒸したときにふっくらとさせるコツ。(そのときの気候によって吸水スピードは変わります)たっぷり水を吸い込んだ大豆は、元の大きさの3倍くらいにふくらみます。
その後、指で簡単に潰せるほどのやわらかさになるまで、大豆を蒸していきます。よく料理に使うような〝大豆の水煮〟よりもずっとやわらかくするのです。
蒸しあがった大豆はペースト状に近い状態になるまで細かく潰すのですが、このときの潰し方が粗いと発酵に時間がかかるそうです。細かく潰せばそれだけ発酵が進みやすくなります。ただ、粗く潰したものをじっくりと発酵させて作ることもできますから、どのくらいまで潰すかは、どんな質感のみそを作りたいか次第なんです。
みそづくりの要、「大豆」「麹」「塩」を混ぜる
潰した大豆がまだあたたかいうちに、事前に麹と塩を混ぜたものを大豆と合わせていきます。大豆に塩のみを先に混ぜてしまうと、塩が大豆にくっ付いてばらけにくくなってしまうんです。
最近では、塩分を気にしてみそはあまり使わないという人も増えているようですが、塩はみその貯蔵性を高めるための重要な存在。塩分濃度が低すぎると、すぐに腐敗が進んでしまいます。大切な役割を担っていますので、けっして悪者ではないですよ。
場合によっては、ここで乳酸菌や酵母を投入することも。それらをまんべんなく混ぜ合わせたら、発酵・熟成用の容器に詰め、室温や湿度が一定に近い状態で保たれるように管理された発酵室に保管、熟成していくのを待ちます。酒や醤油などの製造過程において“醸造”という言葉を耳にすることがあるかもしれませんが。みその場合も同様で、準備を終えた材料を容器に入れて仕込み、発酵を進行させる工程を醸造といいます。
仕込む容器には、陶器製のかめ、プラスチック製の容器、ほうろう製の容器、木桶など、いくつかの種類があります。現代ではほとんどのところでプラスチック容器を使用していますが、伝統的な製法の蔵では木桶を用いることも多いです。
容器に詰める際は、空気が入らないよう注意が必要。空気が入るとそこから酸化して風味が悪くなってしまうからです。
容器にフタをして上に重石をのせたら、発酵・熟成段階に向けての準備は完了。
ここまでの工程が〝仕込み〟です。
美味しくなるのをじっくり待つ 発酵・熟成
この先は、原材料を混ぜた状態のものが、いよいよみそに変化していく発酵・熟成の段階。
発酵室に保存したあとは、人が直接手をかけることがほとんどなくなり、〝じっくり待つ〟状態が続きます。しかし、この間もただ放置しておくだけではありません。品質を保つため、温度や湿度に気を配り、しっかりと環境を管理しながら発酵・熟成していくのを見守るのです。
熟成度合を均等にするため、途中でみそを混ぜることもあります。これを〝天地返し〟といい、頻度は気候や地域、作り手のこだわりによって異なります。
この天地返しは必ずしなくてはいけない作業ではなく、そのままでもおいしいみそになるので、色々と試してみるといいですね。
みその完成!
1年ほど経過すると麹と大豆が馴染み、食べごろに。麹歩合(大豆に対する麹の量の割合)が高かったり、塩が少なかったりすると、熟成スピードは速くなります。発酵・熟成期間は気温や湿度によっても違ってきますので、香りや色つやなどを確認しながら観察。熟成されると、仕込み前のものより色が濃く変化しますよ。
発酵・熟成が完了すると、工場やみそ蔵などでは出荷用の容器に詰めて配送、という工程に移ります。
みそ作りの工程を振り返って思うこと
みそができるまでをおおまかに振り返ると、
1.麹を用意する
2.大豆を水に浸したあと蒸す(煮る)
3.やわらかくなった大豆を潰す
4.潰した大豆に麹、塩を混ぜる
5.容器に詰めて熟成・発酵させる
このように、工程はとてもシンプルですが、繊細な注意を要する作業もあります。簡単にはいかないからこそ、ひとつひとつの作業に奥深さを感じることもできますよね。みそができあがるまでを一通り知ったことで、手作りみそにトライしてみたいと思われた方もいるのではないでしょうか。
基本は人が手によりをかけて複雑な作業をし続けるわけではありません。素材を熟成させ、おいしいみそを作り上げてくれるのは、微生物です。
仕込みが終わり準備が済んだら、あとはおいしくなることを信じてただひたすら待つ。そしてじっくり見守る。手を出さずに待つということは意外と苦しいものですが、その忍耐力や信じる心の強さがとても大切です。
辛抱強く待つという工程から、日本人らしさを感じるのは私だけでしょうか。
みそ作りや、それに人生をかけている方たちの想いに触れると、人生において大切なことを教えていただいているような気がしてきます。
みそ作りには本当に多くの学びがあると思うのです。