豆味噌はご存知ですか?
どちらかというと「赤味噌」という名称の方が馴染みがあるかもしれません。
東海地方で多く生産されていて、愛知県岡崎市の八丁味噌は、豆味噌の中でも全国的にも有名です。
大豆と塩、そして水だけで作る豆味噌は、豊富な栄養素を含んでいて、雑誌やインターネットでもその健康や美容の面が注目されています。
このページでは、そんな豆味噌の特徴や歴史、また、豆味噌の効能やオススメの料理などについて書いています。
コンテンツ
豆味噌の特徴
ベースも麹も“豆”のみそ
豆味噌は大豆と塩、そして水を原料として、大豆に麹をつけた豆麹を使用して作られた味噌のことを指します。
大豆自体に麹菌を付けるのが特徴。
豆味噌は愛知県、三重県、岐阜県の東海3県で作られており、愛知県の八丁味噌は全国的にも有名です。
豆味噌は、赤みがかった焦げ茶色していることから、「赤味噌」とも呼ばれています。
赤い色が特徴で使いやすいように米味噌やだしを混ぜたものは「赤だし」と呼ばれています。
熟成期間が長い
米味噌や麦味噌が1年未満~1年程の醸造に対して、豆味噌はそれよりも長い1〜3年ほどの熟成期間を経て完成します。
熟成期間が長いことで色は濃く、赤みがかった焦げ茶色に変化します。
甘みが少なくコクと深みのあるお味
豆味噌の味は、長い年月とともに作られるコクのある深い味わいが特徴です。
甘みよりはどちらかというと渋みや酸味も感じられます。
旨味成分のかたまりであるチロシンというアミノ酸も肉眼で確認出来る味噌も多々あります。
豆味噌は煮込み料理との相性がいい
普通、味噌は煮立ててしまうと風味が飛んでしまいますが、豆味噌は違います。
逆に煮込めば煮込むほど香り高く美味しくなります。
そのため、味噌煮込みうどんや味噌おでんなど、煮込む料理に使うことが多いです。
豆味噌の歴史
実は豆味噌にはとても古い歴史があります。
ここではその豆味噌の起源について解説しています。
平安時代には豆味噌の専門店があった!
豆味噌は全国的にも東海地方だけで生産されている特殊な味噌です。
その歴史は古く、約1300年。
西暦730年には、現在の愛知県西部の尾張の国から朝廷に献上された記録が残っていて、平安時代には、当時の都である平安京に味噌専門店がすでにあったそうです。
戦国時代には、豆味噌は長期保存が可能な携行食として重宝されていました。
戦闘によっては長期間の滞在になるため、保存ができる食料は大変貴重だったからです。
江戸時代に入り、戦国時代が終わりを告げると、東海道などの五街道が整備されます。
道が整備されたことや廻船業により物流が盛んになりました。
それによって地方の名産品を取り扱う販売所が出てきます。
さらに参勤交代やお宮参りなど、人の行き来が多くなると地方の特産品が全国的に広がって行くことになります。
これによって豆味噌業界は大きく発展していきます。
そして、明治時代になると味噌作りへの参入が自由化されて、名古屋を中心にさらに味噌事業はさらに拡大してきました。
なぜ東海地方だけ豆味噌が普及したの?
全国の味噌の分布を見ると、豆味噌が普及しているのは東海地方だけです。
その理由は東海地方の気候にあります。
東海地方は海が近いこともあり高温多湿。
そのため、味噌の原料である大豆の脂肪酸が酸化して酸っぱくなってしまいます。
そこで麹を混ぜて作る「味噌玉製麹」という製法が編み出され長期保存できる豆味噌が作られるようになりました。
八丁味噌と豆味噌って違うもの?
豆味噌には、代表的なものとして「八丁味噌」があります。
「八丁味噌」と「豆味噌」どうして呼び方が違うのでしょうか?
「八丁味噌」の名前の由来となったのは、愛知県岡崎市にあった岡崎城。
ここは江戸幕府を開いた徳川家康の生誕の地でもあります。
その岡崎城から八丁ほど離れた八丁村で作られた味噌を「八丁味噌」と呼んだことが始まりとされています。
味噌の分類上は同じ豆味噌ですが、特定の地域で作られた豆味噌を「八丁味噌」と呼んでいるのです。
愛知では八丁味噌論争が勃発
2017年の12月に八丁味噌が、国指定する「地理的表示保護制度」(GI制度)に登録されました。
このことをきっかけに、今、愛知県では八丁味噌をめぐる騒動が起きています。
なぜかというと、八丁味噌の代表的な老舗である「カクキュー八丁味噌」と「まるや八丁味噌」がその対象から外れてしまったからです。
もともとGI制度への申請は「老舗メーカー」と愛知県内の「味噌組合」が別々に進めていました。
国が組合の主張を認めることになり、「老舗メーカー」の主張は退けられます。
これによって「老舗メーカー」が海外で「八丁味噌」を名乗れない可能性が出てきているのです。
国内ではこれまで通り「八丁味噌」を名乗れるものの、「製法も品質も違うものを八丁味噌と名乗れるのはおかしい」と老舗メーカー2社は訴えています。
現在もこの問題には決着はついていない状態です。
豆味噌に含まれる栄養素
昔から大豆は、「畑の肉」と言われるほど栄養が豊富。
「味噌は医者いらず」とも言われ、医学的にも様々な効果が発表されています。
健康オタクであり、長寿でもあった徳川家康は、江戸に移ってからも出身地である岡崎市から八丁味噌を取り寄せて食べていたとか。
豆味噌は、味噌の中でも健康的な要素がたくさん詰まっています。
ここでは豆味噌の優れた栄養素について解説しています。
味は濃いけれど塩分は控えめ
味は他の味噌と比べて「濃い」と感じるものの、豆味噌の塩分濃度は11%程度。
旨味成分が多い分、実際に調理に使用する量が少なくて済むので、結果減塩効果があると考えられています。
食事制限で塩分を気にしている方にも最適です。
ビタミンやミネラルなどの栄養も豊富
栄養素もビタミンやミネラル、そしてポリフェノールが豊富に含まれています。
大豆に含まれるポリフェノールの一種である大豆イソフラボンは、ホルモンバランスを整え、更年期障害の症状を抑えたり、骨粗しょう症の予防にも効果的と言われています。
また乳がん予防や美容にも良いとされ、豆味噌は健康食品としても注目されています。
さらに大豆に含まれる植物性たんぱく質は、新陳代謝を促し、コレステロールの増加を抑える効果があります。
乳酸菌で腸内環境を改善
豆味噌は、「味噌玉製麹」という独特の製法により、乳酸菌が豊富に含まれています。
乳酸菌には腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑える作用があり、便秘や下痢などの改善にも繋がります。
腸内環境を整えることは、健康はもちろん美容を保つためにも役立つため女性からの注目を集めています。
免疫力もアップ効果も!?
乳酸菌を多く含んでいる豆味噌には、免疫力を高めてくれる効果があります。
免疫力がアップすることで、風邪や病気にかかりにくくなります。
さらに乳酸菌は花粉症やアトピーなどのアレルギー症状の緩和や口臭予防などにも良いとされているので積極的に体に取り入れたい栄養素です。
大豆タンパク質でダイエット効果も!
大豆から作られる味噌には、良質の大豆タンパク質がたくさん含まれています。
その中でも豆味噌はタンパク質の量が豊富です。
米味噌に含まれる大豆タンパク質の量はおよそ13%。
麦味噌では約10%。それに対して豆味噌ではなんと17%も含まれています。
大豆タンパク質は、ホエイタンパクと比べて、ゆっくり吸収される性質があります。
消化に時間がかかるため、おなかが空きづらくダイエットのサポートにも最適です。
このように豆味噌には、体にいい栄養素がたっぷり詰まっています。
徳川家康は享年75歳という当時としては長寿だったのは、「江戸に八丁味噌を取り寄せて毎日味噌汁として飲んでいたから」だといわれており、とてもヘルシーな食品なのです。
豆味噌の作り方
豆味噌は、大豆と塩が主な原料。通常の一般的に流通している味噌とは違い米や麦を使いません。
そのためつくり方も特徴的。
ここではその豆味噌の作り方について解説しています。
伝統技法の「味噌玉製麹」
豆味噌は作り方にも特徴があります。
大豆を蒸して潰して丸め、味噌玉にし、麹菌をつけて熟成させます。
味噌玉にすることで、味噌の内部が酸素の少ない状態になり、つまり乳酸菌が増えるにはとって良い環境になります。
この「味噌玉製麹」という伝統的な技法で作られた豆味噌は夏の高温多湿にも耐えることができ長期保存が可能です。
自宅でも豆味噌は作れる
「手前味噌」という言葉があるように、昔は、家庭で味噌をつくることは当たり前でした。
今でも味噌好きの人の中には、味噌を手作りしている方もいるのではないでしょうか?
しかし、豆味噌作りは、大豆を蒸して潰し、味噌玉製麹にして、麹菌をふりかけて、塩と混ぜて熟成させて・・・と、本来の作り方を家庭でやるには、なかなかハードルが高くなります。
そこでオススメなのは、豆麹を使った方法。
豆麹を用意することで、最初の工程が必要なく、通常の味噌作りと同じように塩と混ぜるところから始めることができます。
また、最近では、材料がセットになった手作り味噌キットなどもインターネットで手軽に手に入るようになっています。
豆味噌はどんな料理に使うの?
煮立てても風味が飛ばないという特徴を持っている豆味噌。
そんな豆味噌は、一体どんな料理に合うのでしょうか?
豆味噌は煮込み料理に最適
「豆味噌」といえば、名古屋めしの「味噌煮込みうどん」が有名です。
通常、味噌は煮立てるな!と教えられます。
それは、沸騰することで、味噌に含まれるアルコール分が揮発してしまい、風味が飛んでしまうから。
風味が飛びにくいという特徴から、鍋料理や煮物などによく合います。
ぐつぐつ煮込むことで、しっかりと具材に味噌の味が染み込みます。
名古屋といえば、やっぱり「味噌カツ」
名古屋といえば「味噌カツ」です。
豆味噌をベースに砂糖などを合わせて作った「赤味噌ダレ」。
それを豚カツにたっぷりかけて食べます。
甘くてコクがあり、まろやかな「赤味噌ダレ」がとても美味しい名古屋めし。
この「赤味噌ダレ」は、串カツにつけたり、大根につけて味噌田楽にしたりとバリエーションも豊富です。
万能調味料の豆味噌
豆味噌といえば、味噌煮込みうどんや味噌カツのイメージが強いですが、その他の料理に入れてもとっても美味しくなるのです。
例えば、カレーライスやトマト煮込み。
隠し味として加えることでコクが出て一味違った仕上がりになります。
酒や砂糖と混ぜて中華料理に使用する甜麺醤の代わりに使用することも。
愛知県は天下統一した武将である織田信長の出身地でもあり、信長はねぎ味噌が好きだったという説もあります。
豆味噌のまとめ
東海地方の特産品であり「赤味噌」「八丁味噌」の呼称で馴染みの深い「豆味噌」。
ビタミン、ミネラル、ポリフェノールに乳酸菌と豊富な栄養素がたくさん詰まっています。
ダイエット効果や美容にアンチエイジングまで、体にとてもいいヘルシー食材です。
煮立てても大丈夫という特徴は、調理の際に大きなメリットになります。
万能調味料として普段のお料理に少し加えるだけでコクと旨味が増す豆味噌。
ぜひ、一度試してみてください。