2018/02/23

麹 ―大豆を発酵させるみそ作りに欠かせない働き者―

私たちの健康を支えてきた麹

みその主原料のひとつ麹。麹は、日本の食文化を語る上で無くてはならないものです。食は健康と密接に関係していますので、長寿の国日本を支えてきた重要な存在といっても過言ではありません。湿度が高い日本の気候は麹菌が繁殖するのに適しているといわれ、みそをはじめ、醤油、日本酒、甘酒、みりん、酢などの伝統的な発酵食品が麹から生まれています。

長年に渡る日本の食文化への貢献と、今後、更に広い分野で活用されることが期待され、
2006年10月、麹菌=コウジカビ(学名:Aspergillus oryzae アスペルギルスオリゼー)は日本醸造学会によって〝国菌〟に認定されました。

 

麹とは?

そもそも麹とは、どういったものなのかご存知でしょうか?

麹は、米、麦、大豆などの穀物にコウジカビ(麹菌)を繁殖させることで作られます。このとき、コウジカビの素・種菌を混ぜ込む穀物が、蒸した米であれば米麹、麦なら麦麹、大豆なら豆麹になるのです。
そして熱を加えて柔らかくなった大豆にどの麹を加えるかによって、完成するみそは米みそ、麦みそ、豆みそに分類されます。
麹を作る際の穀物の違いで、できあがる麹、そしてその麹を原材料として作るみその種類が決まるというわけですね。

みそは、塩と麹のバランスで甘さが変わります。一般的に塩が少なく大豆に対する麹の割合、麹歩合が高くなるほど甘めのみそに。逆に塩を多く使い麹歩合が少ないと辛口のみそに仕上がります。
一般的なみそに多く使われているのは米麹。麹菌がしっかりと繁殖していれば特有の甘い香りがし、米粒の中まで白っぽく変質しているので手に取って確認してみるといいでしょう。

 

「麹」と「糀」何が違うの?

〝こうじ〟は主に「麹」という漢字が使われていますが、ときどき「糀」という文字を目にする方もいるのではないでしょうか。「麹」は中国から伝わった漢字、「糀」は、明治時代に日本で生まれた和製漢字で、米麹のみを指しています。蒸した米の表面についたコウジカビが米に咲く白い花のように見えたことから「糀」という文字が生まれたといわれています。とてもステキな由来ですし「糀」という文字も使いたいのですが…

〝こうじ〟といえば主に米麹、麦麹、豆麹の3つを思い浮かべていただきたいので、ここでは「麹」の字を使っていきたいと思います。

 

日頃の疲れを癒し、美肌への影響も!

麹菌は繁殖していくときに多くの酵素を生み出します。

人間のカラダはたくさんの酵素でできているため、生命活動において酵素は欠かすことができない要素。食べた物の消化吸収や、新陳代謝は酵素の働きによるものなのです。体内でも生成されるのですが、元気を保つためにも食事として体外から積極的に取り入れ補うことが大切とされています。
酵素がふんだんに含まれた麹は、活きた酵素の補給に最適! 麹に漬け込まれた食品なら、酵素によって分解が進んでいますから、栄養素の消化吸収がいいのです。

酵素により腸内の乳酸菌が増えて腸内環境を整えます。そして風邪に負けないカラダづくりを助けたり便通を正常に保つなど、腸内環境を整えることで健康と美肌への嬉しい影響も期待できます。

 

素材の旨味を引き立てる麹のちからで料理上手に

プロテアーゼという酵素はタンパク質を分解し、肉や魚などをやわらかくします。分解するのと同時に、旨味成分アミノ酸が生成されるので素材の美味しさがアップ。
アミラーゼという酵素によりでんぷんが分解されてブドウ糖が作られるので、素材の甘味も増していきます。

今では定番の調味料となりつつある〝塩こうじ〟は、こうした麹のちからが認識されたことて話題となり、手軽に使えることもあって注目を集めたのですね。
麹をいつもの料理に取り入れることで、一味違った深みのある味付けができるようになりますよ。

 

〝飲む点滴〟甘酒の作り方

麹菌が作り出すのは酵素だけではありません。その他、カラダを健やかに保つために必要なビタミンやミネラル、アミノ酸なども。甘酒が〝飲む点滴〟といわれるほど栄養豊富なのは、麹のちからのためなのですね。
ビタミンB群や、メラニンを抑制するコウジ酸は美肌を目指す女性の強い味方!

それではここで、米麹を使った甘酒レシピをご紹介します。

【材料】(作りやすい分量のため、必要に応じて調整してください)

  • ごはん2合
  • 米麹200g
  • 水500ml

【手順】

①米2合をとぎ、通常通り炊きます

②水を加え、水が米全体に回るようしゃもじで混ぜます
このときの温度がまだ60℃以上なら、60℃以下になるまで冷ましてください
60℃以上の温度では、麹菌の働きがなくなってしまいますので要注意!

③米麹を加え、米や麹のかたまりが残らないよう全体をよく混ぜましょう

④魔法瓶やヨーグルトメーカーといった保温がきく容器に入れます
炊飯器なら保温モードにセットすればOK
フタを半開き状態にしてテープでとめ、タオルをかけるとちょうどいい温度に保つことができます

⑤発酵環境が整ったら、6時間~10時間ほど置きます

だいたい8時間が目安ですが、6時間だと甘さ控えめ、10時間を超えるととても濃厚に仕上がりますよ

料理に使う場合はそのまま、飲む場合にはそのままだと濃く感じられるので水、牛乳、豆乳などで必要に応じてのばしてお飲みください。

すりおろした生姜やりんご、はちみつや練りごまなどなど、お好みでプラスしてアレンジしてみると色々なバリエーションが楽しめますよ。
もちろん、みそをプラスするのもおすすめ!
みそと甘酒の風味は相性がいいですし、みその塩味が甘酒の甘さを引き立ててくれます。

できあがった甘酒は、温かい場所に長く置いておくと状態が変質して酸味が出てきてしまうので、密閉できる容器に入れ、冷蔵庫で保存してください。

☆みそと甘酒を使ったみそ探レシピ「甘酒みそトリュフ」の作り方はこちら

 

麹の保存方法

生麹は生ものですので劣化が進みやすく、特に夏は常温での長期保存はできません。余計な湿気やホコリなどに触れないよう容器やポリ袋などに入れ、冷蔵庫で保管しましょう。10℃以下に保った環境なら20日~1ヵ月が使い切りの目安。もっと長くもたせたいときには、冷凍すれば2か月程度は保存がききます。

一度にたくさん消費しない場合には保存期間の限度も気になるところですよね。ただ、新鮮な麹ほど風味が豊かで酵素の力もイキイキとしていますので、早めに使い切ることをおすすめします。

 

麹を知り、みそを知る

今回はテーマが「麹」ということで、みそそのものからは少し離れた内容をお伝えいたしましたが、麹を知ることで、みそにも更に興味を持っていただけたら嬉しいです。

みそも麹も、作るときの作業手順や環境が違えば全く同じものはできません。これが発酵食品の奥深いところ。関わる人のこだわり、こだわるからこそ外すことができないコツなど、たくさんの想いが集約されて麹、そしてみそができ上がるのですね。そう思うととても感慨深いものがあります。

工場で製造されるのも立派な麹でありみそなのですが、やはり職人の手で仕込まれたものや木桶を使った天然醸造によって作られるものには日本の誇りを感じずにはいられません。

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