日本には、その土地土地で愛されるご当地料理や名物が各地にあふれています。地元を離れて遠方に出かけた際、食べ慣れたものとは一味違うその地域の味に新鮮さを感じたことがある人も少なくないのではないでしょうか。
『みそ探訪記』に訪れてくださっている皆さんならすでにご存じの方も多いと思いますが、みそも地域性が大変高い食材のひとつです。原材料である大豆、麹、塩の種類や量の違いはもちろんのこと、作られる場所の気候や蔵ぐせ(微生物など蔵ごとの特徴)、発酵熟成期間、みそが生まれた背景や食文化などなど… 様々な条件が作用し合って味や香りの違うみそができあがるのです。
日本全国に存在するご当地みそを、その特徴を交えながらPart1、Part2に分けてご紹介していきたいと思います!
[北海道みそ]
中辛口の米みそ 色:赤
サッパリとした味わいで食材の風味を活かしてくれるみそ。
昔から新潟や佐渡との結びつきが強かったことから、越後みそや佐渡みそと似ています。
明治時代の開拓により全国から多くの人が移住してきた北海道。様々な食文化が集まったため、皆さんの口に合うようにということでクセのない味になったと云われています。
◇みそを使った北海道のご当地料理には、「石狩鍋」「ちゃんちゃん焼き」「なんこ鍋」などがあります。今や全国で人気の「味噌ラーメン」も北海道が発祥だそうです。
[津軽みそ]
辛口の米みそ 色:赤
「津軽三年味噌」とも呼ばれています。
辛口ではあるものの、長期間熟成させるため口当たりはまろやかで、独特の旨味が特徴。
少々塩分濃度が高いことや、寒冷な気候が雑菌の繁殖を抑えてくれるので、長期保存が可能になっています。
かつて津軽は凶作が頻発することから、飢餓への備えのために長期保存できるみそ作りが盛んになったと云われています。みそは単なる調味料ではなく、厳しい雪国での貴重なタンパク源だったのですね。
◇みそを使った青森県のご当地料理には、「いものおづけばっと」「じゃっぱ汁」「ホタテ貝焼き味噌」などがあります。
[秋田みそ]
辛口の米みそ 色:赤
米どころ秋田でとれた米から作る麹をたくさん使用していることから、辛口でありながら自然な甘みもしっかりと感じられます。
◇みそを使った東北地方のご当地料理には「いかのもんぺ焼き」「粥の汁」などがあります。
[仙台みそ]
辛口の米みそ 色:赤
戦国時代、徳川家康と伊達政宗はみそを特に重視していました。徳川家康は豆みそで天下をとり、徳川政宗は仙台に「御塩噌蔵(おえんそぐら)」を建てて、兵糧(ひょうろう)としてのみそを製造したと云われています。
夏期に政宗が出陣した際、他藩のみそは高い気温にさらされほとんどが腐敗してしまったものの、仙台藩のみそだけは変質せず、美味だったそうです。その評判が他藩にも広がり、一躍有名に。政宗は軍用だけでなく、産業発展のためにも厳しく指導をおこないながら良質なみそ作りを続けました。
当時から伝わる製法を大切にした、伝統的な長期熟成型のみそが仙台みそです。
◇みそを使った宮城県のご当地料理には「ドンコ汁」などがあります。
[会津みそ]
辛口の米みそ 色:赤
自然環境が厳しい会津盆地で生まれた長期熟成型のみそ。300年以上の歴史があります。
◇みそを使った福島県のご当地料理には「しんごろう」「どぶ汁」などがあります。
[越後みそ]
辛口の米みそ 色:赤
米どころ新潟県で主に作られるみそ。米麹に精白した丸米を使っており、その米粒がみその中に浮いたふうに見えるのが特徴で「浮き麹みそ」と呼ばれることもあります。
塩味の中にもすっきりとした麹の甘みを感じることができます。
◇みそを使った新潟県のご当地料理には「わっぱ煮」などがあります。
[佐渡みそ]
中辛口の米みそ 色:赤
麹が多く使われていて、長期間熟成させるため塩なれしたコク深いうまみを感じられるみそです。
[信州みそ]
辛口の米みそ 色:淡色
全国的に作られており、その生産量は全体の約40%を占めています。酸味のある特徴的な香りがあり、すっきりとした旨味が感じられるみそです。
山に囲まれ寒風が厳しい信州では、みそは貴重な〝活力源〟として大変重要な存在でした。
塩の保存には細心の注意を払っていた武田信玄の時代、大豆の栽培が盛んにおこなわれ、信州の気候と水質もみそ作りに適していたことから、みそは全域に広まったそうです。
◇みそを使った長野県のご当地料理には「五平餅」「鯉こく」などがあります。
[加賀みそ]
辛口の米みそ 色:赤
加賀前田藩の軍糧用として伝わった、塩分が比較的高い長期熟成型みそ。はっきりとした辛みと深いコクが特徴です。
◇みそを使った石川県のご当地料理には「れんこんの団子汁」などがあります。
今回はここまでです。
寒冷な気候の地域では、長期熟成型の米みそが主流になっています。
みそは食文化だけでなく、その土地の歴史的背景にも深く関わっていますから、知れば知るほど関心が増していく方もいらっしゃるかもしれませんね。
次回、Part2では、関東地方からさらに南下した地域で作られるみそたちをご紹介していきます!